自作小説~Mon etagere

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はみだし刑事苦情編(刑事コメディ)


はみだし刑事苦情編④~侵略!刑事(デカ)娘~Ep.2

2011.09.04  *Edit 

「九条ぉ~~~~!! ちょっと、ワシのデスクまで来いっ!!」

 刑事課のオフィスに響く、署長の怒鳴り声。
 時間は午前七時五十分。
 出勤したばかりの九条が、コーヒー片手に肩をすくめる。
 まあ、九条が署長に怒鳴られることなんてのはいつものこと。
 まわりの連中だって気にした風もなく、自分たちの仕事の準備に夢中だ。
 これが星見ヶ丘警察署の朝の定例行事なのである。
 そして九条が、眠そうな顔をしたまま署長室へと入っていった。

「なんですか、署長」

 ノックも挨拶もしない九条。
 だが署長はそれを咎めることもなく、ただ苦悩の表情を浮かべて頭を抱えていた。

「署長、頭痛ですか?」

「馬鹿もん!! ワシの頭痛は、貴様がここに配属されてからずっとだ!! それより九条……おまえ昨日、朝倉と一緒だったよな? 彼女に何をした!!」

 今度は怒りもあらわに、一気に署長がまくし立てる。
 そんな署長の言葉に、九条が昨日の出来事を思い出そうと考え込む。

「え~とたしか、非番だから二人で映画見に行ったんですよ。
そうそう、『ランボーVSエイリアンVSプレデター 地球だって侵略してみせるぜ!! でもセガールだけは勘弁な!!』っていう映画でしてね。そりゃもう、CGだとは思えない映像の迫力と、出てくる兵器がまた、妙にマニア心をくすぐると言いますか……
特にメルカヴァⅣ戦車が120mmAPAM砲弾を撃つシーンや、飛んできたRPG-7を近接防衛装置アイアンフィストで撃ち落とすシーンなんかもう、3Dで観たらたまりません。
部隊のMk44ブッシュマスターⅡの30mm空中炸裂弾が、市街地の壁を突き抜けて、内部で爆発するシーンなんかも……」

「いいかげんにせんか!! 貴様の観た映画の内容なんてどうでもいい!!」

 九条の白熱した映画解説に、署長の叱責が飛ぶ。

「ワシが聞きたいのは、朝倉に何があったかだ!!」

「朝倉がどうかしたんですか?」

「どうしたもこうしたもない。あいつは駅からここに来る間、駐車違反の車に地雷は仕掛けるは、喫煙した高校生を見つけたら密閉した部屋に監禁して、8カートン分のタバコの煙を充満させたんだぞ。
おまけに歩道を渡る小学生を無視した車に向けて、01式軽対戦車誘導弾をぶっ放す始末だ……あったま痛え」

 そう言って、またまた頭を抱えんでしまう署長。
 それを見た九条が、無責任にもこんなことを言う。

「朝倉も、やっと刑事のなんたるかが分かったんじゃないですか?」

「ばっかもん、貴様だけでも世間の警察に対する印象が悪いっていうのに、今日は朝から苦情の電話が鳴りっぱましなんだぞ」

「今は不景気だから、暇な連中がかけてきてるんですよ」

「はぁあ……まあそんなことよりも、今は朝倉のことだ。映画を見た後にどうしたんだ?」

 九条は手にしたコーヒーに口を付け、再び考え込んだ。

「映画の後は、隣接したレストランで食事をして……そうだ! 土砂降りの雨が降ってきたから、駐車場まで走ったんですよ。もうパンツの中までビショビショで。それでそのまま電車で帰すのも悪いと思ったんで、車で寮の前まで送りましたよ」

「寮の前まで送っただと!! 本当にそれだけか? こんなことは言いたくないんだが、なにか間違いを起こすような……」

 そこまで言うと、署長が九条を有無を言わさぬ視線で睨みつける。
 まるで犯罪者に対するような取り調べ。
 だが九条は臆することなく、にこっと微笑むと、

「いやあ間違いって言えば、そうそう、車に入って寒かったんで暖房付けようと思ったら、間違えて冷房かけちゃったんですよ。いやもう寒いのなんのって」

 などと言ってのける。
 それを聞いた署長。
 やっぱし頭を抱え込んで、深い深いため息なんぞを吐き出した。

「まったくどうなってるんだ……これじゃあ、九条が二人も居るようじゃないか……」

「署長も鼻が高いでしょう。署内に完璧な刑事が二人も居て」

 九条の言葉に呆れる署長。
 もはや返す言葉も出てこない。
 そんなおり、当の朝倉がオフィスへとやって来た。

「なんだい湿気た空気だね。署長のお通夜かい? 少しは九条を見習って、犯人の逮捕でもしたらどうだい!!」

 ガムをくちゃくちゃ噛みながら、悪態をつく朝倉。
 刑事課オフィスにいた面々の視線が、一斉に朝倉に集まった。
 だが九条を見習うかは別にしても、何かを言い返そうとした者はいない。
 いつもと違うルックスに、違う言動。
 異様なまでの迫力と殺気にも似たオーラを放つ朝倉。
 誰もが視線をそらし、おずおずと自分の仕事に戻っていく。

「ちっ、しらけた野郎どもだよ!!」

 そう吐き捨てると、そのまま署長のデスクへと向かう朝倉。
 一部始終を見ていた署長が、出迎えるように席を立った。

「朝倉、お前昨日雨に濡れて熱でもあるんじゃないのか? 今日は休んで構わんから、医者のところに行け」

 心配そうに言う署長に、顔を伏せてミラーシェードを下げた朝倉が、上目がちに署長を見る。

「ご冗談を!! 体温、心拍数ともに正常ですよ。アドレナリンだってバリバリ出まくってますよ!!」

 いや、アドレナリン出まくるのはマズいでしょう。
 九条じゃあるまいし。
 まあ、それはさておき。
 態度の悪い朝倉に、署長が体を震わせて耐えるように口を開く。

「あ……朝倉、その格好や態度については今は言わん。だがな……今朝の騒動は一体どういうことだ!!」

 怒りのためか、体どころか言葉まで震えている署長。
 それに対し、朝倉が悪びれた風もなく答える。

「今朝の騒動? ああ、検挙のことですね」

「検挙だとっ!! 一般市民に銃を向け、高校生を監禁することのどこが検挙だ!!」

 その言葉に、朝倉が不敵な笑みを浮かべる。

「署長知らないんですか? ”警官を見て逃げるやつは犯罪者だ!! 逃げないやつは、よく訓練された犯罪者だ!!”っていう言葉を」

「そんな言葉があるかっ!! そんな言葉があったら、市民全員が犯罪者になっちまうだろ!!」

「”今日の市民は、明日の犯罪者(ホシ)”ってね。人間なんて、いつどんな状況で犯罪を犯すか分からないんですよ」

 合ってはいるが、極論である。
 しかもそれを警察官が口にしていいはずはない。
 署長は疲れたように席に崩折れると、深い息を吐き出した。

「とにかくだ……このままお前たちを、捜査に行かせるわけにはいかん。お前たちに一ヶ月の謹慎処分を言い渡す」

 これには今まで黙って聞いていた九条も、たまらず割って入る。

「謹慎処分ってなんですか!! そんなことしたら、犯罪者が野放しになっちまいますよ!!」

「いいか、よく聞けよ……たしかに犯罪は増えるかもしれん。だが少なくともワシの頭痛は治まるし、市民の身の安全も保たれるんだ」

 疲れた表情の署長。
 そのまま二人に視線を送り、一通の辞令を手渡した。

「本日付で貴様らを、私立星見ヶ丘学園女子野球部の監督とコーチに任命する」

「はあ?」

「なんで俺たちが?」

 異口同音に抗議する二人。
 それに構わず、署長が言葉を続ける。

「何を言っておる!! 青少年を正しい道に導くのも警官の務めだ。そして正しい道に導くには、昔からスポーツと決まっておる。スポーツなら不良たちも立ち直るはずだ」

「いやいや署長、それってスクールウォーズの見すぎですよ」

 九条が返した言葉に、朝倉も同調する。

「だいたい今時の不良が、スポーツなんてやるわけないでしょう。ただでさえ喫煙で肺活量減ってるんだから」

 言い終わるなり朝倉が、口の中のガムを壁に貼り付ける。
 これにはさすがの署長も、我慢の限界だった。

「うるさい!! 黙れ、黙れ、黙れ!! 貴様らの顔など見たくもない!! ワシが理性で抑えてるうちに、とっとと消え失せろ!!」

 とうとう怒り心頭の署長。
 何を思ったかデスクの下にもぐりこむと、ブローニングオートライフルを片手に立ち上がる。
 いや、なぜそんなもんがデスクの下にあるし……
 それはともかく。
 署長は怒りでピクピク震える人差し指を、ゆっくりとトリガーに運んでいく。
 これには二人も降参するしかない。
 九条は両手を挙げ肩をすくめるながら、黙ってオフィスを後にした。
 それに続く朝倉。
 彼女は出口までたどり着くと、

「こっちは子守のために刑事になったんじゃねえっつうんだよ!!」

 と捨て台詞を残し、ドアを蹴り破っていった。
 とたんにオフィスの全員が、びくんと体を振るわせる。
 こうして二人が消えた後、オフィスに静寂が戻った。
 もちろん、その場の全員が深いため息をついたことは言うまでもない。


 オフィスを出た二人。
 そのまま地下駐車場まで降りてくる。
 ここには巡回用のパトカーや署員の自家用車などが、所狭しと並ぶエリアだ。
 そしてその一番奥に、鉄条網に囲まれ、各種地雷が設置されたスペースがある。
 もちろん、九条の駐車スペースである。
 そこに停まった一台の大型軍用ジープ。
 砂漠迷彩に装甲モジュール。
 言わずと知れた、九条の愛車”ハマー”であった。
 そのイカツイ軍用車両の前まで来た朝倉。
 一瞥して、軽く鼻を鳴らす。

「なんだい、このチンケなヴィークルは……」

 え?
 チンケなんですか?
 防弾ガラスに7.62mm弾と砲弾の破片にも耐える装甲モジュール。
 サンルーフの変わりに、装甲付リンクターレットを装備した車両なんですけど……
 普段の朝倉なら、

「こんなごっつい車両、どこ走るのよ……」

 などと愚痴っていたというのに。
 面食らって見守る九条の前で、朝倉がいきなり拳銃を引き抜いた。
 シグ・ザウエルP228である。
 両手でしっかりホールドし、眼前にハマーを捉える。

「朝倉、9パラじゃその車は……」

 九条の制止の声を振り切るように、甲高い銃声が連続で響き渡る。
 とたんに銃から吐き出される高速の9mmパラベラム弾。
 それらはボンネットやガラスに火花を散らせては、辺り構わず兆弾しまくった。
 まさに迷惑以外の何者でもない。
 たまたま通りかかった警官が、泡を食ったように車の影に飛び込んだ。
 とはいえ高速弾とは言っても、所詮は弱装拳銃弾なのである。
 ハマーの車体を貫通するどころか、表面を少し焦がす程度で、あっさりとマガジンが空になってしまう。
 
「……気が済んだか?」

 問う九条に答えるように、朝倉が新たな銃を取り出した。

「やっぱり官支給の豆鉄砲じゃダメね……やっぱり銃は火力よ」

 手にしているのはシルバーフレームのデザートイーグル。
 IMI社が製造した50口径オートマチックピストルである。
 今度はそれをハマーに向けて、朝倉が狙いを定める。

「いや、朝倉……たしかに9mmよりは強力だが、7.62mmNATO弾に耐える車体には効かないぞ……」

 そう、九条の言うとおり、.50AEといえども拳銃弾なのである。
 フルサイズのライフル弾を止める装甲の前には、豆鉄砲も同じだった。
 だが朝倉はそれに笑って答えると、一気に引き金を引きしぼる。
 さっきよりも重い、銃声が地下駐車場に再び鳴り響いた。
 はたして、巨大なマズルフラッシュから飛び出した銃弾はというと。
 狙い違わず助手席のフロントガラスに命中すると、兆弾することなく、防弾ガラスを突き抜けた。

「……っ!?」

 思わず九条が息を呑む。
 そりゃそうだ。
 どんな特殊弾頭を使用したとしても、.50AEの貫通力では不可能な芸当なのだ。
 それをいとも簡単に貫通してしまった。
 呆然と見つめる九条を振り返り、朝倉がにんまりと微笑んだ。

「ビックリしてるでしょ? この銃はね、世界に一丁しかないハンドメイドカスタム品なのよ。
 使用する弾丸は.500S&Wマグナム弾で、装弾数は5発。グリップに弾薬が収まらないから、マガジンに斜めに装填する方式なの。
 といってもチェンバーの1発を含めば、本家のM500よりも装弾数は多いわね。
 しかもフルバレル12インチの重厚感と、左右の上方ガスポートのおかげで、ほとんど反動を感じないわ」

 うっとりとした表情で言う朝倉。
 そんな彼女はそのまま体をハマーに向けなおすと、残りの弾丸を撃ちつくした。
 フロントガラスに2発。
 ボンネットに2発。
 そして残りの弾丸を、後部のガラスに叩き込む。

「これぞ刑事の車。少しは箔がついたでしょ?」

 弾痕があちこちに残る愛車の姿。
 ただでさえ威圧感のある軍用ジープに、殺伐とした雰囲気満点の装飾を施され、立ち尽くす九条。
 このとき彼のこめかみに、めずらしく脂汗が滲んでいたのだった。


~Ep3 につづく~


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~ Comment ~

NoTitle 

朝・・・・・・倉? いや、違うな。匂いで分かるぜ・・・・・・! お前、誰だ!(現実逃避)

NoTitle 

いやいやいやいや。
まてまてまてまてwww

いつもと逆じゃないですか。九条さんと朝倉さん。しかもエスカレート。ノンブレーキ。というかジェット噴射で大気圏外まで突き抜けていきそうなwww
それが女子野球部とか……。

どうなるんですかね?

NoTitle 

 まどるDさん、いらっしゃぁい^^

>>朝・・・・・・倉? いや、違うな。匂いで分かるぜ・・・・・・! お前、誰だ!(現実逃避)

 朝倉がどうしてこうなったかは、最終話で明らかに^^
 いつ書きあがるかは不明ですが(・_・;)
 いちおう朝倉ではあるんですが……

NoTitle 

 ミズマさん、いつもコメありがとう^^

>>いつもと逆じゃないですか。九条さんと朝倉さん。しかもエスカレート。ノンブレーキ。というかジェット噴射で大気圏外まで突き抜けていきそうなwww

 実は文面が長くなるので、暴走の40%はカットされています(´_ゝ`)
 きっと新種の九条ウイルスに感染……

>>それが女子野球部とか……。
どうなるんですかね?

 どうなるんでしょうかねえ……(他人事ぇ
 たぶんあと2~3話だと思います(・_・;)
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