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自作小説~Mon etagere

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愛と悲しみの二重奏(学園ラブコメ)


愛と悲しみの二重奏②~「これはツンデレですか?」「いいえ、興味がないだけです」~

2009.06.04  *Edit 

 入学式初日に授業はない。
 なんだか、とっても疲れた入学初日だった気がする。
 優司は大きく息をつくと、駐輪場に向かった。
 すでに生徒の姿もまばらで、ほとんどが送迎バスや保護者の車で帰宅しているようだ。
 もちろんこんな辺鄙な場所に、自転車で来るような物好きは優司以外にはいないらしく、優司の姉の自転車以外は見当たらない。
 優司が自転車を引き出して、サドルに跨る。
 どうやら朝の足の痛みも癒え、力強く漕ぎ出す優司。
 ぐんぐんとスピードを上げ、下り坂にたどりつく。
 朝は地獄の登りだったが、帰りはまさに天国の坂道。
 優司は漕ぐのをやめて、自然に自転車が下るのに身を任せる。
 春の心地よい風が、今日の出来事をすべて吹き飛ばすかのように流れる。
 そんな中を、右へ左へと下る自転車。
 そして、いくつ目かのコーナーを曲がったところで、目の前にセーラー服の姿が飛び込んできた。

愛と悲しみの二重奏①から読むに決まってましてよ?

 キュッキュゥゥザザァァァアアアア
 優司の自転車が急停車し、驚いた女子が振り返る。
 ぶつかりこそしなかったものの、その女子との距離は肩が触れるくらいのところだ。
 「危ないじゃないのよっ!!」
 その女子、藤山京子がきっと睨んでくる。
 藤山京子は、優司の隣の席の例の女子である。
 彼女の名前を知った理由は、教室での自己紹介だった。
 そのときでさえ、藤山さんは自分の名前だけを、淡々と答えていたことを思い出す。
 なぜそんなに、自分と他者を遠ざけたがるのか、優司には分からなかった。
 何も言わずにいる優司に、藤山さんがきつい口調で問い詰める。
 「なに黙ってるのよ?」
 「……あ、ごめん」
 優司が謝るのを、またまたふんっと鼻を鳴らして、藤山さんは歩き出す。
 取り残された優司は、少しムッとなって自転車を漕ぎ出した。
 たしかに今回は俺が悪いけど、だからってその態度はないだろう。
 そのまま藤山さんを通り過ぎ、だが優司はそこで自転車を止めた。
 振り向く優司。
 「あのさ、藤山さん歩いて登校してるの?」
 いきなりそんなことを言われ、藤山さんは一瞬言葉に詰まる。
 それからきっかり、4.78203秒。
 ずかずかと近付いて来る、藤山さん。
 胸を反らせて、優司を睨む。
 「なんか文句ある?」
 「いや、文句とかじゃないけど……」
 「じゃあ、なんなのよ!!」
 「どうせ下りだから、よかったら後ろ乗って行かない?」
 その言葉に、藤山さんの顔が、たちまち赤くなる。
 「なっ!?なに馬鹿なこと言ってんのよ!!あんたなんかの後ろに、乗るわけないでしょ!!」
 「だけど下り坂でも、けっこう長いよ?」
 「そんなの来たときに知ってるわよ」
 「だったらさ、後ろ乗りなよ」
 「嫌よ!!もうほっといて!!あなたと二人でいるところ見られるの、迷惑なのよ!!」
 そう叫んで、歩いていってしまう藤山さん。
 これ以上何を言っても無駄だと思った優司は、しょうがなく自転車を漕ぐ。
 「藤山さん、また明日ね」
 追い越し際に声をかける優司。
 だが藤山さんは何も答えずに、ただふんっと鼻を鳴らしただけだった。


 優司が自宅に帰ると、姉が夕飯の支度をしていた。
 姉の名前は日高由美。
 去年高校を卒業してからは、近所の会社で仕事をしている。
 母は5年前にすでに亡くなっており、父親は単身赴任でほとんど帰ってこない。
 つまり、由美が母親代わりなのである。
 父親から毎月生活費が送られはてくるものの、優司の学費や小遣いなどは、姉の由美が負担していた。
 家事も一人で全てこなしながら働く姉を、優司はいつも不憫に思っていた。
 だからそんな姉に、優司は帰るなり声をかけた。
 「ただいま姉ちゃん。あのさあ、俺、バイトするよ」
 「優司おかえり」
 そう言って、振り向く由美。
 顔が、なにやら不機嫌そうだ。
 朝の自転車の件を、怒っているのだろうか?
 だが、由美の発する次の言葉が、それを否定する。
 「なに生意気なこと言ってんだい!!あんたの頭で、あそこに入れたのは奇跡に近いんだよ。だから、勉強だけに集中して、ちゃんと卒業しなっ!!」
 「でも、それじゃあ姉ちゃんが……」
 「あたしのことはいいんだよ。あんたが卒業したら3倍で返してもらうからね」
 3倍ですか……
 だが、いつも自分を犠牲にしてきた姉の姿を見てきた優司は、自分だけ悠々と高校生活を送る気になれない。
 姉はいつもそうだった。
 自分のことは後にして、優司のことを最優先にする。
 優司の学費や小遣いを出すために、昔の洋服で我慢する姉。
 どこにも遊びに行けずに、毎日帰ってきては家事をする毎日。
 そんな姉の姿は、もう見たくなかった。
 「姉ちゃん、俺も家事手伝うよ」
 「だからあんたは、そんなこと気にしなくていいって言ってるだろ。これ以上、あたしを怒らせるんじゃないよ。ナマ言ってないで、さっさと風呂に入ってきちまいなぁ」
 元レディースの由美。
 母が亡くなってからはレディースをやめこそしたが、今でも怒るとかなり恐い。
 優司は仕方なく、姉の言いつけ通りに風呂に入った。


 そして翌朝。
 優司は、また寝坊してしまった。
 昨夜は姉のことや藤山さんのことを考えて、なかなか寝付けなかったのだ。
 勢いよく飛び起きて、キッチンに向かう。
 そこにはすでに、朝食の用意を済ませて食卓に座る、由美の姿があった。
 「遅いよっ!!何時だと思ってるんだい!!」
 由美がすかさず怒鳴る。
 「なんだよ姉ちゃん、起きてたんなら起こしてくれたっていいじゃないかよ」
 「なに甘えてるんだよ!!あんたももう高校生なんだから、一人で朝ぐらいちゃんと起きなっ!!」
 姉の怒声を浴びながら、着替える優司。
 そのまま急いで歯を磨き、食卓に戻る。
 「姉ちゃんごめん、また今日も自転車借りるよっ!!」
 そう言って、トーストを口にくわえて玄関へ。
 「バカ優司!!またあたしを歩いて会社に行かせる気かいっ!!」
 姉の怒りの声を背に浴びて、優司はまた今日も自転車で登校するのだった。


 まだ朝だというのに、今日も春の日差しが眩しい。
 優司は今日もひたすらと、学校目指して坂を登る。
 二日目とはいえこんな重労働、けっして慣れるものではない。
 坂の半分付近で、すでに足はパンパンである。
 荒い呼吸を無理に整えて、左足と右足を、根性だけで動かす。
 今日も優司を追い越す車から、奇異の視線が送られてくるが、もはやどうでもいい。
 というよりも、疲労と酸欠状態で、すでになにかを考えることが億劫なのだ。
 そんな中、またまた優司の横を、一台の車が通り過ぎる。
 何気に視線を送った、優司。
 そのまま目が釘付けになる。
 そこには、優司が見知った顔があったからだ。
 藤山さん?
 そう、その車の助手席には、セーラー服の藤山さんがいたのだ。
 車で送り迎えしてもらうことにしたのだろうか?
 まあそれも当然のことだろう。
 自転車でさえこんなに大変なのに、徒歩で通学なんて、考えるだけでも憂鬱になる。
 優司が見つめる中、藤山さんと目が合ったが、すぐにプイっと顔を背けられてしまう。
 そしてそのまま、車は行ってしまった。
 優司はその車を追いかけるように、さらに踏ん張って、足を交互に動かした。
 そして十数分。
 やっとのことで、校門までたどり着いた優司。
 やはり今日も、校門の前にはパトカーが止まっている。
 女性の前には今日も人だかり。
 きっとまた、男子生徒の質問攻めにあっているのだろう。
 だが、キャンペーンキャラクターの前には、今日は猫の仔一匹いない。
 マスコットの横を通り過ぎる生徒は、みな一様にマスコットと視線さえ合わせないように、そそくさと通り過ぎる。
 それもしょうがい。
 また昨日のように、爆発騒ぎに巻き込まれたくないのだ。
 優司も、みんなと同じのように通り過ぎようとしたのだが、なんだか興味を覚えて、つい自転車を止 めてしまう。
 「おはようございます」
 「おう、昨日の少年か。昨日はすまなかったな」
 マスコットの中から、昨日と同じ男性のすまなそうな声がする。
 「いえいえ、大丈夫ですよ。今日は、襲われてないんですね」
 「ああ、学生は非行などせずに、真面目に勉強するのが本分だ。それが分かったのだろう」
 そう言って、ずんぐりとした体型の胴を、これでもかと反らせるマスコット。
 いやいや、アンタの凶行を恐れて近付かないだけですから!!
 などと思っても、言えない優司。
 とりあえず苦笑いを浮かべ、駐輪場へと向かう。
 今日も自転車通学は、優司一人だ。
 自転車のスタンドを立て、鍵をかける。
 そして疲れきった身体を引きずるように、教室に向かった。


 教室ではすでに、クラスメイトたちが各々の席について、仲のよくなった友達と会話を弾ませていた。
 人見知りしてしまう優司には、まねのできないことだ。
 優司は自分の席に移動しながら、とりあえず挨拶をする。
 「おはよう」
 『おはよう』
 会話に夢中で、こっちを見ない生徒。
 でも無視されるよりはマシだ。
 そして自分の席についた優司が、隣の席の藤原さんにも挨拶する。
 「おはよう」
 「………」
 やっぱり無視ですか。
 優司はため息をついて、カバンから1時限目の教科書を取り出した。
 それと同時にチャイムが鳴り、中学生ならぬ若井先生が姿を現す。
 緊張する一同。
 昨日のチョーク事件以来、若井先生の前では、みな微動だにせず口も開かない。
 そんな重苦しい空気の中、教壇へと歩く小さな若井先生。
 教壇の下から小さな台を取り出すと、その上にちょこんと乗る。
 そうすると、ちょうど若井先生の姿が教壇から見えるようになる。
 やっぱり中学生にしか見えん………
 一瞬の沈黙の後、日直が叫ぶ。
 『起立!!』『気をつけ!!』『礼!!』『着席!!』
 一糸乱れぬ全員の動き。
 ここはどこかの収容所ですか?
 その緊張した雰囲気を破るように、若井先生が口を開く。
 「みんな、おはようぅ。今日のホームルームはじめまぁす」
 その明るい表情と声を聞いて、全員がほっと胸をなでおろす。
 「今日は特に連絡事項はありません」
 そこで言葉を切り、前の黒板を見つめる若井先生。
 「日直さん、チョークが新しくなってますね」
 「はい!!チョークが無くなっていたので、新しいものを用意しました」
 今日の日直、たしか名前は新井という男子生徒が起立して答えた。
 「えぇと、新しいチョークは半分に折って、先端を尖らせておいてくれると、先生うれしいな♪」
 おい。
 あんた、それ投げる気満々だろ。
 またクラス中に訪れる奇妙な沈黙。
 額に冷や汗を浮かべ、力なく着席する日直の新井。
 そんな彼を救うように、ホームルームが終わったことを知らせるチャイムが鳴った。
 その途端に、新井が黒板に直行したのは言うまでもない。


 1時限目の授業は、若井先生の英語だ。
 若井先生は教壇に立つと、やっぱり黒板をチェックした。
 「あら、新井君。ちゃんとチョーク削っておいてくれたのね♪」
 「はい、先生!!白のチョークは先端を尖らせたAP(アーマーピアシング)に、赤いチョークは先端を丸めた通常弾に、黄色は丸めた中央をえぐったHP(ホローポイント)になっています」
 「まあ、気が利くのね」
 にっこり微笑む若井先生。
 いや、それもう、チョークの役目果たしてないんですけど。
 全員が新井に、余計なことしてんじゃねえという非難がましい視線を送る。
 そんなこんなで、英語の授業は始まった。
 「では、教科書の1ページ目をみんなで読んで見ましょう!!」
 若井先生の声に続いて、読み始める生徒。
 『Hello Roger.(こんにちは、ロジャー)』
 『Hello Margaret.(こんにちは、マーガレット)』
 よくある教科書特有の、意味のない挨拶。
 『Margaret,Is it a dog?(マーガレット、それは犬ですか?)』
 これもよくある質問文。
 どうせこの後に、馬だの鳥だのと返答するに違いない。
 てかこれ、中学生レベルじゃ………
 『Are you foolish?(あんた馬鹿?)』
 質問に質問で答えるマーガレット。
 しかもバカって……
 『This is a H&K mk-23 SOCOM PISTOL.(これはH&Kのmk-23ソーコムピストルよ』
 「ピストルなのかよっ!!」
 言い切るマーガレットに、思わず大声でツッコんでしまう優司。
 一斉に集まる視線。
 優司は恥ずかしくなって、顔を赤くして下を向く。
 いやだって、英語の教科書でそんな物騒な会話するとか思わないし。
 それよりもなによりも。
 どこをどう見たら、そんな拳銃と犬を間違えるんだか……。
 優司がうつむく中、英語の教科書を読む声が、むなしく響いていた。
 こうして、優司の初めての授業は続くのであった。

                 ③へつづく



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~ Comment ~

No title 

新連載、一話から読ませて頂きました^^
今回キャラがいっぱいで、賑やかで楽しいですね♪
先生が最強で素敵です^^月さんとこの小説には、最強な方がたくさんいますね(笑)

教科書にマーガレットさんとロジャーさんが現れたこと、そしてその会話の内容には大爆笑させて頂きました^^

No title 

一応学園ラブコメなのに、そんな気配すらない(゜▽゜;)
キャラクターは、まともなキャラが書けません><
なぜかみんな強くなっちゃうんです><

教科書のところは、マーガレットさんを好きそうな夏美さんのために出してみました^^

No title 

学園ラブコメ好きなので期待してますよ^^

私のためだったのですか!ありがとうございます、超楽しみましたとも(笑)
投票でマーガレットさんに一票入れたのは、私です(笑)

No title 

優司は誰と付き合うんでしょう?(゜▽゜;)
決めてないのかよっ!!
やっぱり順当に藤山さん?
それとも若井先生?
実はBLで日直の新井君とか?(゜▽゜;)

やっぱりマーガレットさんに入れてたんですね^^

No title 

どうもー。
マスコットのなかの人とか教科書のなかの人とかがこちらにも出張してて、そういうところも楽しめますね。
4.78203……これは優司が計ったのか藤山さんが計ったのか、とにかく体内時計ならぬ体内ストップウォッチを装備してるハズ。

とりあえず気のききすぎる新井君に一票です。

No title 

イズミさんこんばんわぁ^^

わたしの小説は基本的に登場人物が、クロスして出てきます^^
さすがにロジャーさんたち本人が、学校に来たりしないけど(゜▽゜;)
4.78203秒にツッコんでもらえるとは思わなかったです(/ω\)
きっと正確すぎる優司の腹時計かも(゜▽゜;)

新井君は………立派な日直さんです(ぇ

また遊びに来てくださいね^^
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