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自作小説~Mon etagere

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恋愛小説(読みきり)


星の流れる丘で(伝記恋愛小説)

2009.05.20  *Edit 

 私立星見ヶ丘高校は、市街地から離れた小高い丘の上にあった。
 自由な校風とおしゃれな制服が話題を呼び、近年では受験生の倍率は高い。
 そんな星見ヶ丘高校のひとりの男子生徒・和泉誠は受験を控え、日が暮れるこんな時間まで、ひとり図書室に残っていた。
 図書室の司書の小早川先生に追い出されるように下校し、唯一の通学手段の路線バスを待っていた。
 しかし、時計はもう夜7時を表示している。
 たしかに登下校時間などは、バスの本数も多いのだが、こんな時間にはそれも期待できない。
 バス停の時刻表を確認する誠。
 その目が一点で止まり、しばらくそのまま動かない。
 「7時55分って……」
 そう、7時代のバスはそれだけだった。
 それどころか、そのバスが最終のようだった。
 誠は薄暗いバス停のベンチに腰掛けると、満天の星空を見上げた。
 今日は雲ひとつない。
 なるほど、星見ヶ丘とはよく言ったものだ。
 その時、丘を駆け上がる車のヘッドライトが、誠の目にまぶしく入ってきた。

 誠の目の前で、その車は煙を上げて急停車する。
 ゴムの溶ける嫌な匂いが、辺りにたちこめる。
 なんていう車なのだろうか?
 車に詳しくない誠には分からなかった。
 ただ分かったことは、排気量の大きそうなうるさい外車で、かなり運転が荒いということだ。
 ばたむっ。
 左側の運転席のドアから、誰かが出る。
 かなりの長身だ。
 影のシルエットから女だと分かる。
 薄暗いバス停のベンチに、その女はつかつかとやって来た。
 「少年、星見ヶ丘はここでいいのかな?」
 いきなり声をかけられて、うろたえる誠。
 そしてなにより、初対面で少年と呼ばれたことに憤りを感じる。
 彼も反抗期まっさかりなのである。
 黙って見返す誠に、女は首をかしげて腰に手を当てる。
 女の端正な顔が光に浮かび上がり、手入れのしていない長い黒髪が風になびく。
 しばし見つめ合い。
 「どうした少年。言葉が分からないとかじゃないだろう?まさか過去に宇宙人に連れ去られて、脳ミソに何か埋め込まれでもしたのか?」
 宇宙人?
 何を言っているんだ、この女は。
 まるで宇宙人にでも会ったような顔で見上げる誠。
 「僕は少年じゃありません!!和泉誠っていう名前があります」
 「フッ、なかなか威勢がいいな、少年」
 怒鳴る誠に、笑みを浮かべる女。
 女はそのまま、誠の横に腰掛ける。
 そのとき誠の鼻を、女性特有の甘い香りがかすめていき、彼の心臓がドキリとする。
 だが、バス停の薄暗い明かりに照らされた女の姿が、それを一気に沈めてしまう。
 女は一見すると、二十代前半に見える。
 顔も綺麗だしスタイルも良さそうだ。
 だが手入れのしていない伸びきった黒い髪。
 だらしなく着たデニムの上下。
 化粧っ気のない顔。
 それら全てが女の美貌を帳消にしている。
 あまり女に興味を抱かなかった誠でさえも、もったいないと思う。
 そんな誠の視線を受けて、女は懐からなにかを取り出し、誠に手渡す。
 「月刊オカルト、記者……金井美夏?」
 「そうだ少年。わたしは怪しい者ではないぞ」
 露骨に怪しむ誠に、美夏は自信たっぷりに言い放つ。
 いや、あなた十分怪しいですから……残念っ!!
 記者そのものがすでに怪しい斬りっ!!
 などという、なつかしいツッコミはおいといて。
 「だから少年じゃなくて、誠です!!」
 と言う誠に、美夏は顔を近づけてくる。
 「では誠君。星見ヶ丘というのはここのことなのかな?」
 先ほどの質問を繰り返す美夏。
 息がかかるほどの距離に、美夏の存在を感じ、顔を赤くする誠。
 「ここが星見ヶ丘ですよ」
 「そう……か」
 やけに悲しそうにつぶやく美夏。
 だがその表情は、陰になってよく見えない。
 「そういえば誠君。君は私に逢ったことはないかね?」
 いきなりそんなことを言われ、戸惑う誠。
 「今どき、そんなナンパの仕方は古いですよ」
 「古いか……そうだな。いや気のせいだろう」
 そんな美夏の言葉に、不思議なものを感じた誠。
 だがそれがいったい何なのか、もやのようなはっきりとしないものを、誠は意識していた。
 「ここの伝説を知っているかね?」
 また別の話題を振られ、誠が美夏を見る。
 「有名な話ですからね」
 「よかったら詳しく話してくれないか?」
 「ここの伝説の取材に来たんですか?」
 「まあ、そんなところだ。しかし、ここの星空は変わらないな」
 そう言って夜空を見上げる美夏。
 その言葉を不審に思い、誠が聞き返す。
 「美夏さん、ここに来るの初めてじゃないんですか?」
 「私は初めてだよ。さあ、話してくれたまえ」
 そう言い目をつぶる美夏を、誠は綺麗だと思った。
 とたんに誠の心臓が高鳴り、それを隠すように、誠が語り出す。
 星見ヶ丘にまつわる過去の伝説を。

 時は江戸時代。
 そこには鷹司雅信という若者と、雫という娘がいた。
 雅信は京の鷹司家の流れをくむ家系の跡取りである。
 対する雫はただの村娘。
 二人は互いに惹かれながらも、周囲の目がそれを許さなかった。
 いつも人目を忍んでは、近くの丘で落ち合う二人。
 そこは星が良く見える丘だった。
 雅信と雫は、よくそこで夜空を見上げては、叶わぬ夢に思いを馳せる。
 そんなささやかな幸せも、ある日とつぜんに奪われてしまう。
 雫と逢っていることを、雅信の両親が知ってしまったのだ。
 もちろん怒り狂う両親。
 「雅信、血迷ったか!!貴様は鷹司を継ぐ男だぞ」
 「そうですよ雅信。どこの馬の骨とも分からぬ小娘なぞに騙されて、身分が違いすぎます!」
 だが雅信は聞かなかった。
 両親の目を盗んでは雫と逢い、二人の愛は深まっていく。
 そしてそれが、新たな悲劇の幕開けとなる。
 「父上、それはどういうことですか?!!」
 夜の静まり返った鷹司邸に、雅信の声が木霊する。
 そんな雅信に上座に座った父、信定が声を荒げる。
 「まだ目が覚めぬのか!!もう決まったことじゃっ!!あの小娘は明日、人柱にされる」
 人柱。
 それは、江戸の都を霊的に繁栄させるために行われる呪法の生贄である。
 この江戸に限らず、過去の歴史の中で、何度も行われてきた忌まわしい事実。
 だが、なぜ雫なのか?
 そのとき雅信は、ひとつの真実に思い至る。
 「父上の差し金ですね?」
 父・信定の返事も待たずに、部屋を飛び出す雅信。
 夜闇の中を必死に走る。
 気付くと雅信は、あの丘に来ていた。
 そしてそこには雫の姿がある。
 「雫……」
 ためらいがちに声をかける雅信に、雫は涙の跡の残る顔で、精一杯の笑顔を向ける。
 「雅信様」
 「雫、私は…」
 「それ以上は、おっしゃらないでください。雫は明日、この世から消えてしまうでしょう。だから雅信様を淋しくさせてしまいますね」
 すでに死ぬことを受け入れているのか、雫は静かな口調で言った。
 雅信には信じられなかった。
 だから声を荒げてしまう。
 「何を言っているんだ!!私の事なんかどうでもいい!!それよりも、私が君を愛してしまったから…」
 雫の指が雅信の唇をそっと塞ぎ、彼の言葉を止めた。
 「それ以上はおっしゃらないでと言いましたのに。雅信様の愛は、偽物だったのですか?わたくしの愛は今でも本物です。だから、それを否定するようなことは言わないで下さい」
 いつもと変わらぬ優しい雫の瞳が、雅信を包む。
 「もし、生まれ変わったなら……身分も関係なく愛し合う時代に生まれ変われたなら……わたしはこの丘で、雅信様をお待ちします」
 「私もかならず君を探し出すよ」
 この夜、星々が見守る中。
 ふたりは初めて唇を交わし、契りを結んだ。
 そして雫は、短い人生を終わらせることになる。
 その後、雅信は鷹司の名を捨て、江戸の町から姿を消した。
 全国を放浪したとも言われている。
 また、現代でも雫を探しながら彷徨っているとも。

 美夏は目を閉じたまま、誠の話す伝説を静かに聞いていた。
 「これが伝説の全てだったはずです」
 誠がそう告げると、美夏は静かに瞳を開ける。
 その瞬間、誠はドキリとしてしまう。
 彼女は泣いていたのだ。
 たしかに悲しい物語ではあるが、しょせんは伝説である。
 しかも人前で泣くなんて。
 驚く誠に、美香がそっとつぶやく。
 「ありがとう、誠」
 「あ、いえ、ちょうど時間つぶさなくちゃいけなかったので」
 そう言う誠は気づかなかった。
 美夏が誠”君”と呼ばなかったことを。
 そして、そんな誠の言葉に、美香がまた首をかしげる。
 「こんな夜更けに時間をつぶすって、何をしていたんだい?」
 「何って、勉強ですよ。遅くなっちゃったからバスを待ってたんですけど」
 「ふむ、それは実に残念だ」
 何が残念なのだろうと、誠は不思議に思った。
 「そのバスとやらは、さっき君が話している間に、通り過ぎたと思うのだが」
 腕を組み、こともなげに言う美夏。
 慌てて丘を見下ろす誠。
 見れば丘を下るライトが、たしかに見える。
 「うそ……」
 言葉をなくし立ち尽くす誠に、美夏が悪戯っぽく声をかける。
 「誠、乗って行くかね?」
 そう言い、美夏は車を振り返る。
 「え?あ、いいんですか?」
 「もちろんだよ。ところで……」
 そこで言葉を区切り、美夏は誠を振り返る。
 「君は運命を信じるかね?」
 「運命……ですか?」
 「そうだ、運命だ」
 誠は、生まれてまだ17年しか生きていない。
 そんな彼に運命を信じられるはずはなかった。
 他の若者と同じように、運命とは自ら切り開くものだと思っている。
 だから、誠は冗談めかしにこう答えた。
 「まさか美夏さんと僕が、伝説の生まれ変わりだとか言うんじゃないですよね?」
 「変かね?」
 真面目に聞き返す美夏に、誠の鼓動が早くなる。
 「いや、変と言うか、出来過ぎじゃないですか?」
 「あははははははは、冗談だよ」
 そう言い、美夏は助手席のドアを開け、誠を車内に誘う。
 冗談?
 果たしてそうだろうか?
 冗談にしては、さきほどの美夏の瞳は真剣だった。
 本当に冗談で言ったのだろうか?
 誠は不審に思いながらも、助手席のシートに身を沈める。
 そのとき誠は、そのシートの座り心地に違和感を感じた。
 シートの下半分に、腰から下がすっぽりと収まってしまうような感覚。
 そして身を後ろに傾けると、シートが完全に包み込むように覆ってくる。
 それは、レースなどに使われるバケットシートである。
 そして見たこともないシートベルトに、四苦八苦する。
 「これは4点式シートベルトだ」
 カチャカチャと、美夏が誠のベルトを固定する。
 「用意はいいようだね」
 颯爽と運転席に乗る美夏。
 キュッキュッキュ、ヴウォンッ、ヴウォンウォン
 すさまじい爆音を立てて、エンジンが唸りを上げる。
 美夏がアクセルを踏み込むと、車が一気に加速する。
 キュキュキュキュキュゥゥ
 とタイヤがホイルスピンを起こし、車体後部が横滑りする。
 低い車体のせいで視界が悪く、誠は生きた心地がしなかった。
 身体を後ろに押し付けるような圧力が、車が加速していることをかろうじて知らせる。
 キュッキュゥゥゥゥゥ、ズザザザザァアアアアア
 次の瞬間、フルブレーキングに180度ターン。
 「ぎょぎゅぇぇえ」
 などと、意味の分からない悲鳴を上げる誠。
 しゃべりたくても、すさまじいGに耐えるのがやっとで、口を開く余裕がない。
 「誠、何か言ったかね?」
 と、涼しい顔の美夏。
 「美夏さん、できればゆっくり……」
 ヴウォンヴォン、キュキュヒュルルルゥゥウウ
 誠の言葉を飲み込むように、またまた加速する車。
 外灯もない真っ暗な山道を、ヘッドライトだけを頼りに、右へ左へ下っていく。
 誠にしてみれば、ヘッドライトに浮かび上がった壁が迫ったと思った次の瞬間、今度はガードレールが視界いっぱいに広がっているのだ。
 しかもこんな暗い夜の山道。
 いつガードレールから崖下に転落するかも分からない。
 誠は何度も心臓が止まりそうになりながら、必死にダッシュボードを手で押さえた。
 そんな様子を見て、美香が声をかけてくる。
 「なんだ、誠。もしかして怖いのか?」
 恐怖で言葉が出ない誠が、首をがくがくと縦に振る。
 「安心したまえ。やっと逢えたのだ」
 「……え?」
 聞き返す誠に、美夏が顔を赤めるのが分かった。
 「なんでもないよ!!」
 照れを隠すように言う言葉を合図に、美夏がハンドルを切る。
 車は小高い丘に沿って、山道を下っていく。
 ヘッドライトが夜の黒い丘に、まるで流星のように流れていった。
 まるで星が降るように。
 こうして運命の歯車が、また回り始めた。

             ~星の流れる丘で おわり



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~ Comment ~

No title 

長くも短くもなくまとまっていて読み応えがありました♪

>「それ以上はおっしゃらないで…」
の互いに対する本物を確かめ合う台詞、好きです。
そんな中でもモトクロス的な部分が月さんらしさが出ててニヤリです(笑

No title 

素敵なお話ですね^^
途中は切なかったですが、読後感はよく、誠と美夏に「よかったねぇ」という感じです。
最後の、顔を赤らめ照れ隠すような美夏が可愛いです。美夏、いいキャラですね^^

途中で出てきた懐かしい芸人ネタには、思わず笑ってしまいました^^

No title 

sammoさん。
最後のは、車で星のように下るのは決まっていたんですけど、気が付いたら遊んでました(゜▽゜;)
このお話、昔書いたオカルトの登場人物の設定だったりします^^
全然違う読みきりにしちゃいましたけど^^;

夏美さん。
今気付いたけど、美夏を反対にしたら夏美さんに
∑( ̄□ ̄;)
美夏の男っぽいしゃべり方は、なんか記者で男っぽくしゃべるキャラにしただけで、美夏が鷹司雅信の生まれ変わりっぽくなっちゃってますね^^;
ギター侍、なつかしい≧∇≦
彼がボクシングの内藤選手に似てるのが最近のツボ≧∇≦

美夏さん、かっこいい・・ 

かっこいい女の人は憧れてしまいます。
車の運転の迫力がすごい!さすが効果音がリアル。
最後がまたキュンといいですね。上手いなあと思いました。
詩は別ブログで書かれているのですよね。
どちらもステキです。

No title 

雨宮さんいらっしゃぁい^^
わたしは車の免許を持っていますが、Bbなので、あんな運転はしません
(゜▽゜;)
バイクの効果音をベースに、映画とかのをイメージしてアレンジしたんですけど、リアルと言っていただけるとうれしいです^^
詩の方も頑張りますので、また遊びに来てくださいね^^

No title 

こちらでははじめまして、朝倉悠斗です。
先日はコメントありがとうございました!
さっそく遊びに来させていただきました。

小説読ませてもらいました。
残念ながら途中で展開がよめてしまったものの、美夏さんの喜びがよく伝わってきて、思わずにんまりしてしまいました。
車の運転で喜びを表してるのがすごいなあと思いました。
江戸時代のときのお話は本当に切なくて、雫を失ったあと雅信がどのような日々を過ごしたかを考えると、美夏さんの溢れんばかりの喜びも解ります。
でも、誠が知っている伝説は全部ではなくて、実は本当はこうだったんだよ、と美夏さんが本当の伝説を教える、というものでも面白かったかもしれないですね。

桃太郎のお話もすごく気になってるので、また遊びに来させて頂きますね。
ではでは短いですが、失礼しました。

No title 

ご訪問ありがとうございます^^
やっぱりネタバレしちゃう書き方でしたね><
もう少し巧ければよかったんですけど><
美香のお話を語るのも良かったかも^^
コメントいただけると、とても励みに、そして勉強になります^^
また遊びに来てくださいね^^
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